天理教若狭道分教会

幸せは
自分の心が決めるもの

「今日が一番幸せや」

93歳の女性が、そう笑顔で話す姿を目の当たりにしたとき、私は心の奥深くを揺さぶられました。

先日、婦人会の総会が天理教の教会本部で盛大に開催され、私はご婦人さん方をお連れするお手伝いしました。その中に、ひときわ印象的なご婦人がいらっしゃいました。なんと、約20年ぶりに“おぢば”へ帰ってこられた93歳の方。その方は、私が子どもの頃に教会に通ってくださっていた信仰熱心な方で、いつも優しい笑顔が印象的でした。

今回は、同い年のご友人(同じく93歳)も一緒に来られました。お二人はとても元気で、信じられないほど明るく、毎月ご自宅で神様のおつとめを続けておられます。昼食にはピザやお肉料理を、コーラも勢いよく飲まれ、93歳とは思えない食欲に圧倒されるほどです。

「うちらの旦那は、60代で早よ亡くなってね。それから30年、一人で暮らしてるけど平気やわ。男の人は奥さんが亡くなったら5年くらいで亡くなるけど、女は旦那おらんでも長生きするねん(笑)」

車での移動中、ふとした会話の中で、お二人が笑いながらこんな話をされました。

でも、その笑顔の裏には、過酷な人生がありました。

小学校3年生で戦争が始まり、農家で育った少女時代。嫁ぎ先は家のない次男さんで、生活は一からのスタート。義兄には毎日のように金銭を無心され、ご主人にも早くに先立たれました。晩年には、お孫さんの重い病気や詐欺被害といった、想像を超えるような試練が続いたそうです。

それでも、彼女はずっと笑顔を絶やさない。

私は思わず尋ねました。

「どうしてそんなに前向きに、幸せそうに生きられるんですか?」

すると、返ってきた答えはシンプルで、

「今日が一番幸せやと思って生きてるねん」

その一言が、私の心のあり方を根底から問い直すきっかけとなりました。

私たちは、過去の失敗を悔やんだり、まだ来てもいない未来に不安を感じたり、つい“今”をおろそかにしてしまいがちです。でも、私たちが生きているのは、まさにこの「今」という瞬間です。

「ないもの」ばかりに目を向けて、「足りないこと」ばかりを嘆いていては、一生幸せは感じられないのだと思います。

大切なのは、どんな日にも「ありがたいな」と思える心を持ち、「今日が一番幸せ」と言える生き方をすること。

幸せとは、状況に左右されるものではなく、「自分の心が決めるもの」です。

そう教えてくれたのは、93歳の笑顔のご婦人でした。

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